
下北沢の片隅にある古着屋「ヌックラ堂」を舞台に、訳ありの服とそれを纏う人々が織りなす連作。古着が記憶や持ち主の事情を運んでくる、街の小さな物語集である。カバーは温かみのある電球色に満たされた店内を俯瞰気味に描いたイラストで、ハンガーに並ぶ衣類、木の床、座り込む眼鏡の女性と三毛猫、店主らしき人物の所作までが細密に書き込まれる。タイトルは白い短冊状の枠に縦組みで配し、賑やかな画面に静かな余白を差し込む。雑多なものに囲まれて生まれる小さな対話を、装丁そのものが先に語り出している。
著菅野彰
装丁坂野公一
装画川野
河出書房新社 / 2016年
文学・評論