
江戸川乱歩の代表的短篇「人間椅子」を、書き下ろしのイラストで全篇ヴィジュアル化した一冊。椅子に身を潜め、見知らぬ女性の温もりを求める醜い男の手紙という、倒錯と陶酔の物語を絵で辿る試みである。表紙は淡い水色を地に、薄紅とインクブルーで刷られた人物と無数の手・指・花弁が画面いっぱいに散る構図。半透明に重ねられたレイヤーが幻覚のように像を曖昧にし、題字は黒の明朝で縦に深く据えられる。腰巻きの水色がカバーの空気と溶け合い、頁を繰る前から物語の湿度が立ちのぼる。
著YeatsWilliamButler、芥川竜之介、ほか
装丁根本綾子
リットーミュージック (発売) / 2022年
文学・評論