
失恋した一人の少女の死をめぐる、甘くて痛い青春ミステリ。人を好きになるとはどういうことか、その問いを静かに抱えた物語である。表紙には、セーラー服姿の少女がこちらを見つめる写実的なイラストが大きく据えられ、瞳には光と滲みが繊細に描き込まれている。タイトルは桜色の手書き文字で画面を斜めに横切り、手元に握られた黄色いひよこの玩具が幼さの残響として効いている。透明な少女性と死の予感を、淡く危うい色彩のなかに封じ込めた一冊。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論