
後宮を舞台にした中華風ファンタジー。皇宮の権謀と炎をめぐる王の物語が、装画と書のような題字によって絵巻のように立ち上がる。白い衣をまとい長い髪を垂らした人物が静かに正面を向き、その背後にもうひとり、手前を見据える人物が描かれる。墨と朱が滲み合う背景は煤けた黄土と藍を孕み、絵具の飛沫が炎の名残のように散る。赤い印影の上に重なる白抜きの大きな漢字が、静謐な人物像と燃えさかる気配の双方を引き受け、王という一字に物語の重みを集めている。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論