
指揮者として戦後の音楽界を駆け抜けた著者が、藝大時代を共にした山本直純との日々を綴った青春回想記。練習室と酒場、楽譜と笑い声が地続きだった頃の熱気が、軽やかな筆致で立ち上がる。淡い若草色の地に、指揮棒を握って向き合う二人の青年。周囲には薔薇のつる、シャンパンボトル、ビアジョッキ、珈琲カップ、宙を舞う楽譜や星が、ひとつの宴のように散りばめられている。手描きの線と抑えた色数が、過ぎ去った青春の輪郭をやわらかに留めて、文字と絵のあわいに音楽の残響を漂わせる。

著岸政彦、柴崎友香
装丁名久井直子
装画小川雅章
河出書房新社 / 2021年
文学・評論