
霊媒師を名乗りながらインチキで霊を祓う男・櫛備十三が、訳ありの幽霊たちと対峙する連作ホラーミステリ。黒地に朱赤の帯を効かせた装画は、額縁を手にした青年の正面と、その鏡像のように映り込むもう一人の横顔を重ねて描き、生者と死者、本物と贋物の境界を一枚に収める。タイトル文字は明朝の縦組みで「贋」「物」だけを朱に染め、画面の闇を切り裂くように配置される。胡乱な除霊師と、彼が覗き込む向こう側の気配を、額の内と外で静かに対峙させる構成だ。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論