
明治末から大正にかけての時代を背景に、市井の女性たちの生をすくい上げる連作短編集。くすんだグレーの地に、結い上げた髪と深紅のドレスをまとった若い女性の半身像が大きく据えられる。耳元の梅と胸元の白いリボンが春の気配を呼び込み、タイトルは縦組みの白抜き明朝で胸の前を貫き、各文字脇には「SOU」「SHUN」「FU」とローマ字の読みが小さく添えられる。冷たい背景と熱を帯びた赤の対比が、春まだ浅い季節の翳りと女性たちの芯の強さをそのまま画面に重ねている。

著中村文則
装丁鈴木成一デザイン室
装画佐藤翠
幻冬舎 / 2013年
文学・評論