
恋愛小説を書けない男性作家のもとに、突如現れた謎めいた相棒。虚構と本心が入り混じるなかで紡がれる、ほろ苦い恋愛をめぐる連作短編。カバーは赤いソファに腰掛ける二人の人物と、その傍らに伏せる大きな獅子を緻密なイラストで描き、背景には書架と散らばる原稿、舞い落ちる花弁が配される。淡い線で重ねられた「偽」の大書体が薄く浮かび、漢字タイトルが縦に整然と並ぶことで、絵の物語性と書物としての佇まいが拮抗する。虚実の境を行き来する小説の気配を、装画と文字組のレイヤーがそのまま画面に翻訳している。
著桐野夏生
装丁川名潤
装画西川真以子
朝日新聞出版 / 2021年
文学・評論