
家庭という閉ざされた場所で起きた暴力の記憶を抱え、父を殺そうとした過去を封印して生きてきた文也。ある日出会った女性・梓に自分と同じ匂いを感じる——「決別」と「再生」をめぐる物語。鮮烈な朱赤の地に、灰色の斧が画面中央へ斜めに突き立てられ、その重みに沿うように右側へ大きく流れる縦組みの黒い題字。英題と著者名のローマ字は斧の柄に寄り添う細い欧文で添えられる。色面と物体、和文と欧文の落差が、家族という戦場の鈍い緊張を一枚に圧縮している。

著平野紗季子
装丁大島依提亜
装画Alexis Ralaivao
新潮社 / 2024年
暮らし・健康・子育て