
日常のなかで感情の輪郭がうまく結ばない瞬間を、軽やかな線で掬い取った短編集。2017〜2021年の作品を収める。表紙にはスマートフォンを掲げる少女が大きく据えられ、赤いキャップとマスタード色のTシャツが画面の温度を引き上げる。タイトル文字は古い看板めいた厚みのある装飾書体で縦横に組まれ、扇形の放射線や英字レタリングがレトロな印刷物の気配を漂わせる。淡いベージュの余白とにじむ水彩のトーンが、題名の脱力感を静かに支えている。
著遠田潤子
装丁大久保伸子
装画いとうあつき
小学館 / 2021年
文学・評論