
地方の町に暮らす者と通り過ぎる者、根づくことと離れることの距離を淡く照らす長編。表紙には誰もいない木の丸椅子が据えられ、斜めに差し込む西日が脚の影を床へ長く伸ばす。背後には作業場めいた金属棚や工具の気配がにじみ、写真にはわずかな粒状感と退色が残る。題字は重心の低い明朝で写真と余白の境に大きく置かれ、上半分の生活の残響と下半分の白さを静かにつなぐ。誰かがついさっき席を立ったあとのような、薄情という語の体温を装丁が引き受けている。
著宮部みゆき
装丁新潮社装幀室
装画藤田新策
新潮社 / 2014年
文学・評論