
自らを宇宙人だと自覚した一家四人が、核戦争前夜の地球で人類の救済をめぐって苦悩する長編。観念と滑稽がない交ぜになった、晩年の三島由紀夫がたどり着いた寓話的傑作である。表紙は白地に放たれたクレヨンめいた素描で、四人の人物が正面を向いて並ぶ。黒い線でラフに象られた顔と衣服のあいだに、黄色の小さな閃光と、空に浮かぶ皿状の物体がちらりと差し色で置かれる。題字は黒の明朝、著者名は太く堂々と頭上に組まれ、稚拙さを装った絵の素朴さと拮抗する。荒唐無稽な設定を、童画のような筆致が静かに地上へ引き戻している。
著夏井いつき
装丁有山達也+中本ちはる(アリヤマデザインストア) 題字
装画牧野伊三夫
小学館 / 2022年
文学・評論