東日本大震災と原発事故から10年を経た福島県いわき市小名浜で、著者が地元の人々に会い、語らいながら、当事者/よそ者、復興、原発、ふるさとを問い直す人物エッセイ。「中途半端」な場所と立場を引き受け、他者との間に引かれた線を手繰り寄せる姿勢が、災間を生きるための倫理として立ち上がる。淡い水色の空と海を大きく取り、岸辺の小さな人物と赤白の煙突だけを置いた表紙は、土地の静けさとそこで続く生活の気配を同時に映す。上下に広がる余白と抑制された文字組が、離れたもの同士の距離を見つめる本の主題を静かに支えている。