
生者と死者、人と動物、過去と現在が境界を越えて静かに交差していく群像小説。雪原に立つ裸の木立、遠くに横たわる湖と山並み、黄色いベンチに腰かける小さな人物、画面下を歩く一匹の黒い犬と、犬が残してきた点線の足跡が、余白の多い画面に淡く配置されている。題字は本文と同じ太さで穏やかに置かれ、赤い小鳥と「KOZO NO YUKI」の細い文字だけが控えめな色彩として響く。広い空白そのものが、過ぎ去った時間と、まだそこに居る者たちの気配を抱きとめている。

著本葉かのこ
装丁coil
装画くじょう
KADOKAWA / 2022年
文学・評論