
本づくりの現場に身を置いてきた著者が、装丁という仕事を通して「だれのために本はある?」と問い直す随筆集。本を編む手と暮らしの時間が、軽やかな筆致で綴られる。表紙にはターコイズと墨色の二色だけで描かれた、人や生きもの、道具、文字や看板の群像が画面いっぱいに広がる。版画的な線とざらついた紙の質感が、手仕事の温度をそのまま定着させたような印象を残す。にぎやかな絵のなかに据えられた素朴な題字とオレンジの帯が、騒がしさの只中にある静かな思索を浮かび上がらせている。

著高山なおみ、スイセイ
装丁寄藤文平+鈴木千佳子+文平銀座
河出書房新社 / 2016年
文学・評論