
創刊されることのない新聞をめぐる、ウンベルト・エーコ晩年の長編小説。陰謀論やメディア批評を軽妙な筆致で描き、戦後イタリアの暗部へと読者を引きずり込む。表紙はくすんだグレーを背景に、ピンクと黒の二色刷りで描かれた手・剣・薔薇・蛇口・万年筆・ナイフ・骸骨といった寓意的なモチーフを散りばめ、文庫サイズに似合わぬ猥雑な情報量を確保している。タイトルの太いゴシック体が画面を区切り、断片の集積から一本の筋を立ち上がらせる装丁が、噂と虚報を編んで「真実」を捏造する小説の手つきと響き合う。

著宮田愛萌、渡辺祐真(スケザネ)
装丁大久保明子
装画北澤平祐
文藝春秋 / 2025年
文学・評論