
結婚式当日に「離婚届」を手にした男女が向かい合う——タイトルから滲む不穏さと甘さの同居を、装画と造本が静かに引き受けている一冊。スーツ姿の男性とウェディングドレスの女性が小槌のようなものを掲げて対峙し、背後には淡い緑の植栽と、舞い落ちる離婚届の用紙。タイトルは右に縦組みの黒明朝、「離婚」だけを白抜き反転にして緊張を仕込み、左上の著者名は細い欧文ローマ字とのコントラストで品を保つ。鮮やかな緑のさざめきと白い余白が、笑いと痛みの両側を見据える物語のトーンを言い当てている。

著多崎礼
装丁須田杏菜
装画にしざかひろみ
KADOKAWA / 2015年
文学・評論