
月をめぐる詩歌や随筆、小説の断片を集めたアンソロジー。古来人々が月に託してきた想像や憧れを、文学のなかから掬い上げる一冊。表紙には、頭部に巨大な巻貝のような渦を抱えた人物がペン画調の細い線で描かれ、垂れ下がる髪の根に小さな獣たちがひそむ。黄ばんだ生成りの地と、題字を白抜きにした臙脂の縦帯、三日月のような細い飾りが、夜気をまとった幻想を静かに浮かび上がらせる。月を仰ぐ者の姿は、ここでは内側へと丸まり、文字の森に沈んでいく読者の輪郭にも重なって見える。
著樋口恭介
装丁コバヤシタケシ
装画清川漠
筑摩書房 / 2021年
文学・評論