
セーラー服の少女と、自転車の前カゴに収まる一匹の黒猫。タイトルに掲げられた「さよならの旅」が示すのは、別れを抱えながら歩む少女の静かな道行きだろう。表紙は淡い水色の空と川辺の風景をやわらかな水彩調で描き、白い文字組のタイトルを画面左に縦に配して余白を広く取る。アニメ調のイラストでありながら彩度を抑え、川面の反射や草の揺らぎに繊細な筆致を残すことで、青春小説の軽やかさと喪失の気配を同時に滲ませている。少女と猫が並ぶ構図そのものが、旅の道連れという物語の骨格を一枚で伝える装画だ。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論