文学・評論
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 両国橋の御落胤
山本巧次
江戸の町方同心「おゆう」が現代の科学知識を頼りに事件を解き明かしていく時代ミステリ。シリーズ続編の本作では、両国橋にまつわる出生の秘密が物語の核となる。表紙は、灯火に照らされた座敷で朱の着物の娘が小さな手鏡を覗き込む一場面を、温かな飴色のグラデーションで描き出す。背後の襖の奥に佇む人影、卓上の徳利、手前に置かれた火鉢と箸が、静けさのなかに張りつめる気配を立ち上げる。柔らかな筆致と暗がりのコントラストが、推理と人情の交差する江戸の夜を呼び込んでいる。