
短篇よりさらに短い掌篇=ショートショートを書き継いだ作家による、集成版。日常のふとした隙間に滑り込む不安や皮肉、現実が静かに歪む瞬間の手触りが、簡潔な文の連なりから立ち上がる。表紙では、青みを帯びた髪と水色のシャツの人物がカメラを顔の前へ持ち上げ、レンズが目元を覆い隠している。生身の顔と機械の箱が入れ替わるその構図は、見る者と見られる者の境界を静かに揺らし、タイトルの〈箱の中のあなた〉という問いをそのまま視覚へ置き換えている。

著伊吹亜門
装丁坂野公一
装画水沢そら
小学館 / 2024年
文学・評論