
貧困や虐待、ネグレクトのなかで家族のケアを担う「幼き介護者」=ヤングケアラーの少女の物語を、オランダ発のグラフィックノベルとして描く一冊。サーモンピンクの地に、針葉樹の森と空を舞う数羽の白鳥、赤い自転車に乗る小さな人影が水彩で配される。墨のにじみで暗く立ち上がる木立と、淡く透ける空の対比が、孤独の重さと、それでもどこかに残る逃げ道の気配を同時に示す。日本語タイトルは細い明朝で控えめに置かれ、絵の余白を損なわない。装画と書体が、声を上げにくい子どもの輪郭をそっと縁取っている。
著暮田真名
装丁北野亜弓
装画吉田戦車
左右社 / 2022年
文学・評論