
江戸川乱歩の幻想短編を絵本へと翻案した一冊。押絵の世界に魅入られた男と「私」が列車のなかで交わす、現実と虚構の境を揺らす物語が、児童書のかたちで結晶している。表紙は、丸眼鏡に山高帽の男が観音開きの押絵額を両手で掲げ、奥行きの深い廊下のような車内に立つ構図。木目の床と天井、ぶら下がる素朴な電球、抑えた朱と濃褐色の油彩タッチが、覗き箱を思わせる遠近を生む。タイトル文字は明朝の縦組みで余白に静かに置かれ、額のなかの小さな別世界へと視線を導く。絵そのものが押絵となって、読者を旅へ連れ出す装丁である。
著濱野京子
装丁城所潤
装画あわい
静山社 / 2023年
絵本・児童書