
孤島に建つ奇妙な十角形の館を舞台にした、本格ミステリの記念碑的な一作。新装改訂版として読み継がれている定番である。夜の草地の奥に青い館が静かに佇み、背後の満月には骸骨の輪郭がうっすらと透ける。金色がかった縦組みのタイトルは「殺人」の二文字が二重写しのように影を引き、館へと続く一本道のかすかな歪みが不穏さを増幅させる。館・月・闇という古典的なモチーフを最小限の構図で凝縮し、密室の物語そのものを表紙に閉じ込めたかのような一冊。

著伊吹亜門
装丁坂野公一
装画水沢そら
小学館 / 2024年
文学・評論