
19世紀パリの警視庁、表立っては扱えぬ怪事件を捜査する部署を舞台にしたミステリ。錬金術や心霊主義が交錯する時代の空気を、現代の作家がフレンチ・ノワールの筆致で再構成する。淡いブルーの地に黒い縦長のパネルを二本立て、その間にシルクハットとステッキを携えた紳士のシルエットを切り抜きで配する。下端に淡いミントグリーンの帯、右上には〈1984〉の創刊年を刻んだ円章。古典的なポケミスの様式を保ちながら、人物像を細部の描写ではなく闇の輪郭として示すことで、迷宮の入口に立つ捜査官の輪郭そのものへと読者を誘い込む。

著BraithwaiteOyinkan、粟飯原文子
装丁水戸部功
早川書房 / 2021年
文学・評論