
奇想と幻想を独自の文体で紡いだ短編作家のベスト・コレクション第一巻。突然町に現れた穴、何でも巡む生物のいる惑星、奇妙な絵文字の刻まれた石——常識の縁がほどけていく19の物語が収められている。表紙は深い茶色の地に、欧文のイニシャルを大きく引き伸ばし、文字の輪郭そのものを装飾化した造形が配される。淡いピンクで描かれたアルファベットは、判読の手前で図像へと崩れかかり、奇想譚の入り口にふさわしい揺らぎを生む。書名や著者名は端正な明朝で小さく置かれ、文字を遊ばせる余白と相まって、言葉が形を持ちはじめる瞬間を装丁が体現している。
著平沢逸
装丁川名潤
カバー写真竹之内祐幸
講談社 / 2024年
文学・評論