
恋をし、結婚し、子を得てなお生まれる、言い知れぬ不安。東京からニース、ジェノヴァへと旅する夫婦が、見失った絆をさがす長編小説。表紙には青いインクで滲ませたような男女の肖像が描かれ、寄り添う二人の輪郭はやわらかく、しかし瞳の先はそれぞれに違う方向を向いている。タイトルはドットを連ねたデジタル風書体で淡く重ねられ、現代的な距離感を画面に差し込む。湿度をはらんだ青の濃淡が、満ち足りた生活の内側にひそむ揺らぎをそのまま絵にしている。
著岩室忍
装丁芦澤泰偉
装画歌川広重
祥伝社 / 2021年
文学・評論