
公家武者・信平の若き日々を描く時代小説シリーズの三作目。四谷を舞台に、刀を抜いた主人公が事件に挑む一篇である。表紙には、烏帽子に白い狩衣と朱の袴をまとった人物が刀を構え、満月を背にして宙に舞う姿が描かれる。淡い水墨調の青い夜気と地表の渦、足元に交差する二振りの刀身が動きの瞬間を切り取り、タイトルは骨太の毛筆体で大きく縦に配されている。古典的な装画と力強い書の組み合わせが、雅と武の二面を併せ持つ主人公像を端的に立ち上げている。

著伊吹亜門
装丁坂野公一
装画水沢そら
小学館 / 2024年
文学・評論