
江戸の貸し物屋を切り盛りすることになった若い娘を主人公にした時代小説。店先の帳場に頬杖をついて座る町娘の姿が、ほの暗い店内の灯りに浮かび上がる。背後には木箪笥や器、籠などの貸し物が積まれ、格子の手すりや板間の質感まで丁寧に描き込まれている。タイトルは縦組みで右側に大きく配し、朱と金を帯びた色面に白抜きで重ね、下部には小さく「江戸娘、店主となる」と添えられる。柔らかな筆致のイラストと格式のある題字組みが、商家の日常と物語の起点を一枚に閉じ込めている。

著中島久枝
装丁荻窪裕司
装画川上和生
光文社 / 2017年
文学・評論