
中学生の和真と樹希、境遇の異なる二人が出会い、「むこう岸」へと手を伸ばしていく物語。鉛筆の濃淡で描かれた都市のスクランブル交差点を、歩道橋から見下ろす制服姿の少年の後ろ姿。林立するビル、横断歩道、行き交う車と人の群れが荒い線でひしめき、画面はモノクロームの灰で覆われる。そこへ筆勢のある黄色い手描き文字でタイトルが大きく重ねられ、足元に著者名が同じ黄に灯る。閉ざされた風景にひとすじ差し込む色が、彼岸へ渡ろうとする視線そのものを示している。

著工藤純子
装丁坂川朱音
カバー写真田中達也+MINIATURE CALENDAR
講談社 / 2023年
文学・評論