
内田康夫による旅情ミステリー連作の一篇。各地に伝わる怪談や言い伝えを辿る道行きが、事件と土地の記憶を結びつけていく文庫作品である。表紙は、夕陽に染まる山あいの里を背に、マフラーを巻いた女性が後ろ姿で佇むイラストレーション。茜色の空と紅葉、舞い落ちる葉が画面全体を温かいオレンジで包み込みながらも、振り返らない人物のシルエットがどこか寂寥を漂わせる。タイトル文字は墨色の明朝、著者名は深い紫の縦組みで配され、穏やかな郷愁の奥に潜む不穏を静かに引き寄せている。

著チェ・ウニョン
装丁坂川栄治+鳴田小夜子
装画山本由実
亜紀書房 / 2020年
文学・評論