
京都の市井に生きる人々を描いた連作短篇集。表題作「青玉の笛」をはじめ、町や寺社を舞台に、名もなき者たちの心の機微が静かに綴られる。表紙は銀閣寺らしき楼閣と砂盛り、白砂の流れを俯瞰で捉えた一枚絵で、薄墨と退紅をにじませた版画調の筆致が夜気を漂わせる。淡い満月、影絵のような松、紙の地肌を残したマットな質感が、京の闇に沈む時間そのものを物語る。題字は黒の明朝で右上に大きく構え、絵と書がひとつの軸物のように静かに釣り合っている。
著土橋章宏
装丁谷口博俊
装画須田悠
筑摩書房 / 2017年
文学・評論