
情事のあとに残る痕跡を、五人の女たちの視点から描く連作短編集。男女の関係に潜む執着や記憶の手触りを、静かな筆致ですくい取っていく。表紙は暗い背景に浮かぶ女性の上半身を中心に据え、顔の輪郭を蝶のような白い花弁が覆い隠す。レースの衣服と胸元の濃い紫の花が、繊細さと官能をかすかに同居させる。タイトルは細い明朝で控えめに置かれ、余白の白が画面をいっそう静謐に引き締める。輪郭を消された人物像は、関係のあとに残る輪郭のなさそのものを映している。

著森美樹
装丁新潮社装幀室
装画藤本麻野子
新潮社 / 2016年
文学・評論