
時空を超えて訪れる客の悩みに耳を澄ます、ホテルのお客様相談係・桜井千鶴を主人公とした連作。風変わりな来訪者たちのささやかな依頼が、時代を跨いで結ばれていく一冊。淡いミントグリーンの地に三角の山並みを重ね、中央には黒のワンピース姿の少女と、箒、薔薇の額、ベッド、トランク、玩具といった寄る辺なき品々がふわりと舞う構成。線の細い人物画と小物のコラージュ的配置が、現実から少しずれた宿の気配を伝える。柔らかな色面に物語の手触りを託した装丁。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論