
夏の終わり、声を失った何かと向き合う少年少女の物語。文庫の表紙は、雨に煙るバス停の待合に並んで腰掛ける二人を、青を基調にしたみずみずしいイラストレーションで描く。手前には水面に広がる波紋、奥には雲の切れ間からのぞく空が重なり、画面全体が透明な水のフィルターをくぐったような寒色のグラデーションで満たされる。タイトルは縦組みの明朝体で白い帯に置かれ、「声」の一字だけが朱色に灯る。途切れかけた音と、まだ残る気配。装画と一字の朱が、その境目の静けさを掬い上げる。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論