
魚住くん」と呼ばれる青年たちのひと夏を描いた連作の第一巻。淡い水彩で縁側の一場面が描かれ、卓袱台には小瓶や小皿、調味料が散らばり、窓辺には風鈴とひまわり、奥にはガラス越しの青空が広がる。畳に腰を下ろした二人の表情や、見切れた誰かの足までが、生活の余白として丁寧に置かれている。タイトルは涼やかな筆致の青で縦に流れ、絵の透明感を引き締める。汗ばむ昼下がりの空気と、そこに溶けていく塩のひと粒のような時間を、装画とともに静かに掬い上げた一冊。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論