
山に魅せられた女性たちの来し方をたどる連作小説。登山という一本道に見える行為のなかで、出会いやすれ違いを重ねる五人の姿が、淡い記憶の景色のように綴られていく。表紙は、蛍光ピンクの空に細い月が浮かび、虹色に染まる雪山と湖面が広がる幻想的なイラスト。岸辺に佇む小さな人影が、目の前の景色をひとり受け止めている。手描き文字のタイトルは輪郭だけのアウトラインで配され、淡い色面のうえを軽やかに泳ぐ。鮮烈さと静けさが同居する装画は、山の記憶が時とともに色を変えていく感覚を写しているようだ。
著佐伯泰英
装丁髙林昭太
装画水口理恵子
光文社 / 2017年
文学・評論