
幕末の大坂、適塾の蘭方医・緒方洪庵を背景にした事件帳シリーズ第二弾。北前船をめぐる騒動を描く新装版である。淡い水色の地に、長い黒髪を流し青磁色の打掛をまとった女性が伏し目で佇む。打掛には朱と緑で唐獅子と花の意匠が細やかに描かれ、襟元の朱と帯の格子文様が静かな差し色になっている。題字は右側に縦組みで大きく配し、絵の余白を生かす構成。古典絵画の趣をたたえた人物画と端正な書体が、海路で運ばれた品々と人の縁が交差する物語の気配を、静謐にすくい上げている。
著岡部えつ
装丁アルビレオ
装画長乃
双葉社 / 2017年
文学・評論