
花簪職人を主人公に据えた江戸情緒の連作短編集。職人と娘が向かい合う縁側の場面を描き、桜・紅葉・椿といった四季の花々と、絡みつくように画面全体を渡る赤い糸が物語を予感させる。淡い桜色の地に、緑の着物と橙の着物が穏やかなコントラストを生み、簪の細工物や茶器、小鳥といった小道具が丁寧に置かれて職人の手仕事の気配を漂わせる。タイトル「恋糸ほぐし」は赤い線描の意匠に重ねられ、もつれた想いをほどく時間の手ざわりを、装丁全体が静かに支えている。
装丁関口信介
装画Minoru
Minoru / 2012年
文学・評論