
東京の片隅にひっそりと店を構える人形修理工房を舞台にした連作短編集。古びた人形たちと、それを持ち込む人々の小さな機微を、静かな筆致ですくいあげる物語が編まれている。表紙には、薄暗い室内で椅子に腰かけ、机に向かう女性の絵画が据えられた。窓から差し込む淡い光が床に伸び、緑がかった壁と扉がやわらかな陰影をたたえる。タイトルは明朝体で縦に三行、白抜きで控えめに配されている。閉ざされた室内の気配と、人形と対話する手仕事の時間が、画面の静けさのなかで重なり合う。

著白鷺あおい
装丁長﨑綾
装画おとないちあき
東京創元社 / 2020年
文学・評論