
明治の文明開化期、洋食店を舞台にした少女の物語を思わせる一冊。袴に矢絣の着物をまとい料理皿を掲げる娘、コックコートの青年、暖簾の前に立つ少年が、桜の散る石畳の店先に配される。淡い桜色とセピアの混ざるやわらかな水彩タッチで描かれ、上空からは花びらが舞い落ちる。タイトルは縦組みの明朝体を桜色の細い線で抜き、画面に溶け込むように右上から流れる。和と洋、ハイカラと郷愁が同居する明治の空気が、色と筆致のあわいに立ちのぼる装画である。

著翡翠ヒスイ
装丁近藤ひろ
装画新井陽次郎
KADOKAWA / 2017年
文学・評論