
柳田国男の『遠野物語拾遺』を京極夏彦が現代の語りへと再話したretold版。岩手・遠野の山野に残る妖怪、亡霊、神隠しといった伝承を、平易な口語のリズムで蘇らせる試みである。表紙は深い青に沈む夜空と、霞んだ満月。枝越しに浮かぶ大樹の頂に一羽の鳥がとまり、画面全体に細い枝のシルエットが走る。白抜きの和文タイトルと、薄く重ねられた筆記体の「retold」が二重の声のように響き合う。古い物語を新しい言葉で受け直す本書の輪郭が、月明かりの濃淡にそのまま映し出されている。

著伊吹亜門
装丁坂野公一
装画水沢そら
小学館 / 2024年
文学・評論