
食べることの記憶を起点に、家族、青春、老い、日々の小さな営みまでを縦横に綴った著者のエッセイ集。母のチャオズ、手作りのサンゲタン、七歳でぼたもちを覆い尽くした記憶——食卓の断片から人生そのものを描き出す一冊である。表紙はクラフト紙のような素朴な地色に、横たわる人物、椅子、缶、魚らしき細い線画が朱と黒で散らされ、手描きの素描がそのまま貼り込まれたような佇まいを見せる。題字と著者名は和文の縦組みで控えめに置かれ、白い帯が画面下部を引き締める。紙の匂いと台所の気配を同時に立ち上げる、生活に根ざした手の温度の装丁である。
著いとうせいこう
装丁佐藤亜沙美
河出書房新社 / 2014年
文学・評論