
東京の小さなビストロを舞台に、料理と人の機微が静かに重なっていく連作短編。客と料理人のあいだに生まれるささやかな謎が、皿の上の一品とともに解かれていく一冊。表紙はラクレットチーズが流れ落ちる瞬間を中心に据え、ミートパイやガレット、白と赤のワインを赤いクロスの上に俯瞰で配した水彩タッチのイラスト。白地のタイトル枠に明朝の縦組みを置き、枠下には筆記体の英題を添えて、賑やかな食卓と静かな書影の余白が拮抗する。湯気の向こうに小さく描かれた人物が、料理のドラマと物語の気配をそっと繋いでいる。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論