
シェイクスピア演劇を愛するがゆえに、警察とテロリストへと分かたれた二人を描く長編。漆黒の背景に、制帽をかぶった警官と長髪の青年が並び立ち、その間に十字のかたちが浮かぶ構図が、対峙する運命を一枚で語っている。タイトルは白抜きの明朝でやや傾き、英字の筆記体が芝居の幕開けを思わせる。下段の帯では金色の太い明朝で「そして今日も幕が上がる――。」と刷られ、舞台の照明のような輝きを添える。劇場性と暴力性、その両方を孕む物語の温度を、暗色と金で静かに立ち上げた装丁である。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論