
作家自身の傷や恋愛の記憶を、夏の光のなかで静かに見つめ直していく連作短編集。表題作を含め、過去をほどき直すような繊細な筆致が貫かれている。生成りのざらついた地に、皺の寄った白いワンピースが脱ぎ捨てられたように置かれ、右側を一本の細い縦帯が静かに切り分ける。タイトルは細身の明朝で縦に流れ、余白が大きくとられている。布のやわらかさと、画面を裁つ一筋の線。脱がれた衣のあわいに、夏のあいだに置き去りにした感情の手触りが残っている。

著乗代雄介
装丁野中深雪
装画坂内拓
文藝春秋 / 2023年
文学・評論