
中世播磨を舞台に、神獣として伝わる大鹿・伊佐々王と人とのあわいを描く伝奇譚。古の土地に息づく異形と、それを見据える者たちの邂逅が、静かな筆致でつづられる。表紙では、白い体毛をまとった巨大な鹿が水辺へ降り立ち、対峙する人影をのぞき込む瞬間が淡い青と灰のグラデーションで描かれる。降りそそぐ細かな飛沫、霧のように溶ける輪郭が幻想の気配を強め、毛筆を思わせる墨色の題字と黄色い帯状の副題が画面を引き締める。神話と現実が滲み合う物語の手触りが、湿度をはらんだ一場面に凝縮されている。

著三浦ゆえ 平成女子性欲研究会
装丁鶴丈二
装画白根ゆたんぽ
文藝春秋 / 2014年
エンターテイメント