
大人のための寓話集。日常のすぐ隣にひそむ可笑しさや不穏を、童話の体裁を借りて掬い上げる短編が並ぶ。表紙は藍の縦縞を地に、深い臙脂の椿が大ぶりに咲き、深緑の葉が余白を埋めて全面を覆う。花芯に置かれた金が光を含み、版画めいた手仕事の質感が画面に温度を与えている。中央には白く抜かれた変形の札が置かれ、その中に明朝体で書名と著者名が静かに収まる。和の文様の華やぎと、白い枠の余白がもたらす佇まいの落差が、童話と「おとな」の距離をそのまま装幀に翻訳している。

著朝倉宏景
装丁岡本歌織
装画おとないちあき
講談社 / 2019年
文学・評論