
小説や随筆をまたぐ短い文章を集めた一冊。物語の断片や言葉のかけらが、読み手の内側に静かな水面を立ち上げていく。表紙は群青から濃紺へと沈むグラデーションの海。白い小舟に乗った熊が、赤い小箱から何かを差し出すように身をかがめ、水中には開いた本や閉じた本が魚の群れのように沈んでいく。柔らかな色鉛筆の筆致と余白を活かした構図が、夜の静けさと夢の手触りを同居させている。装画と余白が、本そのものを海に喩えるような世界観を、書名のささやかな白文字とともにそっと差し出している。

著椎名誠
装丁國枝達也
装画野又穫+植田真
KADOKAWA / 2016年
文学・評論