文学・評論
そこにある山-結婚と冒険について
角幡唯介
雪原に伏せる橇犬と、傍らに走る青いロープ。北極の探検行を続けてきた書き手が、「なぜ結婚したのか」という問いから「人はなぜ冒険するのか」へと思索を伸ばしたエッセイ集。表紙は雪面に踏み込まれた靴跡と犬の表情を生のまま切り取った写真で、青みがかった寒色のなかに犬の毛並みだけが温度を持つ。縦書きの白い書名は雪に溶け込みかけて、辛うじて画面を支える。帯の「選択肢、なし ゆえに、自由。」という反語めいた一文が、極北の静けさと家庭という日常の距離をひと息に結ぶ。